2010 8/17 (火曜日)

養生は薬によらず尋常の身持心のうちにこそあれ

こんにちは、こはりです。

運動不足、現代人の宿命とも言えるものかもしれない。

家電の充実で家事が大幅に軽減された。

公共交通機関の整備で歩く時間が激減した。

近年の生活習慣病の増加を見れば、あきらかに利便性、経済効率と引き換えに、現代人はかけがえのない健康を売り渡しているとはいえないだろうか。

とりわけ歩く時間の激減が、人間を人間たらしめる足腰の弱化を招き、心身の不安定を誘発しているのではないかと考える。

「頭寒足熱」とは東洋的な心身の理想状態を表現している。

「上虚下実」とも言うが、下腹(丹田)を核として、下半身が力強く充実していて、その反対に上半身はすっきりと力が抜けている状態である。

その反対が、「上実下虚」であり、上半身にのぼせ上がり、気が立つ、ほてる、首肩がこる、脳の緊張興奮がとれず不眠になる。
下半身が力なく弱れば、足腰が冷え、腰の力が抜けることによりヘルニアや腎機能の低下を起こし、女性であれば婦人科疾患を招く。

運動不足は単なるカロリー消費という問題だけではなく、心と体を包括した「気」や「エネルギー」の観点からも、重要なファクターとなる。

現代人は一日に5000歩から7000歩くらい歩いているとされる。

結構歩いているように思われるかもしれない。

江戸時代と比べてみる。

庶民で一日30000歩、15km歩いていたとされる。

その差は歴然としている。

幕末の時代、未曾有の国家的危機の中で、多くの傑物が出て難局を乗り切れたのも、歩行によって培われた「胆力」によるものとするのは言いすぎだろうか。

現代では社会的地位が高くなるほど、お抱えの運転手などがいて歩数の減少に拍車がかかる。

これは由々しき事態である。

しかしながら、真のエグゼクティブはそれを補完するエクササイズを、ジムやパーソナルトレーニングなどで行って心身の健康を保っているのだろう。

それでは庶民はこの不況の時代に、いかに心身の健康を保ちうるか。

自らの心身に投資できる金額は限られている。

そこで提案したいのが「生活即エクササイズ」の発想だ。

健康のための運動に時間を割くのは、おっくうであるという人が多いのではないか。

一日働いて帰ってきて、それから運動となると気がめいるのも理解できる。

無理やり奮い立たせて、いやいや運動したとしても、それはストレス以外の何物でもなく、かえって健康を損なう結果になるのは目に見えている。

発想を転換しよう。

帰ってからやるのではなく、仕事中であろうが、エクササイズに変えてしまうというものだ。

例えば地下鉄などの移動は、階層構造になっているため必ずエスカレーターや階段を使うことになる。

この時、エレベータやエスカレータを使うのではなく、積極的に階段をのぼってみる。

今までは、長い階段を見ると嫌気が差していたのを、発想の転換により、長い階段であるほどに喜び勇む在り方だ。

「これはラッキー!」「健康のための運動ができるぞ!」「しかも無償で!」

エスカレータの右側追い越し車線に並び歩くなどという姑息なマネはせず、正々堂々階段に挑むのだ。

しかも、ただのぼるだけではつまらない。

一足飛び、二足飛び、をとりまぜて、時につま先立ちで、変化に富んだ刺激を与える。

ヨガでは体の同じ部位に同じ刺激が繰り返し与えられ続けると、それがたとえ良い刺激であっても、偏らせ、歪ませ、鈍くさせる原因となると考えている。

たとえば、ゴルフなど一方に捻ることを強要する運動では体にゆがみを生みやすい。
実際腰痛で悩む人が多いのが何よりの証左だ。

そんなときはヨガでは「逆刺激」の解決法が用意されている。

すなわち、いつものゴルフスイングと反対にねじる運動を行うことで、ゆがみが是正され、不快な症状が解消されるというものだ。

ヨガの要素「前屈」「後屈」「側屈」「ねじり」は、そうした身体のゆがみに対し変化に富んだ刺激をタイミングよく与えることを旨としている。

ゆえに体に良いといわれるポーズでも、毎日何度も繰り返していてはかえって害になりかねない。

だから階段をのぼることひとつとっても、マンネリにならずいろいろな刺激に変えてみるといい。

それはまた動機付けにもなる。

デスクワークで座っている姿勢は、股関節を折り曲げた「前屈」の姿勢だ。

パソコンに向かえばさらに手が前に来て、集中が高まるほどに顔が前に突き出し前屈が強まってくる。

胸がせばまり背中が張ってくる。

首が前にせり出せば固くこわばってくる。

首が凝ると脳に向かう頚動静脈が圧迫され、目がかすんだり、脳の酸欠を招くだろう。

そんなときは「逆刺激」である「後屈」がいい。

背もたれにもたれかかって反り返るのもいいだろう。

大概はあくびと同様に自然にやっているのではないか。

本来はそうしたゆがみを治したり、疲労を回復するための動きは、あくびやくしゃみをするのと同じように生理現象の一つとして行われるべきものだ。

ネコがしきりに伸びをするのがそれで、人間でも寝返りがまさしく自然的な整体法と言われている。

元気活発な子どものほうが寝相が悪い。

それはなによりしなやかな健康の証であり、寝た時と起きる時がまったく同じ姿勢であるということは、感覚が鈍化してゆがみが硬直したとりかえしのつかない身体ともいえる。

現代人は特にそうした自然的な感性が鈍くなる傾向にある。

都市化が進み自然に触れる機会が少なくなったこともその原因としてあるだろう。

日の出日の入りの自然の摂理を無視して、一日中蛍光灯がギラギラと照りつけたところにいれば、早晩バイオリズムに狂いを来たし自律神経の失調を招くだろう。

同様に本来備わった体の知恵というものが、どんどん覆い隠されているのが現代人の特徴でもある。

今まで風邪ひとつひかなかった元気だった人が、ある日突然コロッと若死するのは、まさに典型的なケースだ。

本来なら体は繊細に反応しあるときは下痢や発熱などでゆがみを是正するのが体の知恵というものだ。

ところがそうした日々のメンテナンスを怠ってきたせいで、負の要素は蓄積し、あるとき臨界点を超えて爆発を起こす。

病気になってからは、特に重篤な場合は、大々的な外科手術など西洋医学の手を借りなければ救命できないこともある。

しかし、本当の治癒はそこにあるのではなく、日々の養生にこそ、些細ともいえる身体の反応にこそあるということを忘れてはならないだろう。

瑣末にすぎる階段昇り降りが最先端医療にも勝るとも劣らない治療法になるなどとは、なんと大げさな。

くだらない、そう思われるかもしれない。

しかし、「養生は薬によらず尋常の身持心のうちにこそあれ」の言葉の通り、いかに日々の生活を、その字のごとく「生を活かす」ことに転化できるかにかかっている。

お金をかけず、時間を割くこともせず、仕事も、家庭も、楽しんで健康法に変えてしまう。

「生命が輝く方向へ」

人生が有意義であるということは、まさにそういうことではないだろうか。

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