なぜ「養生断食」なのか?

断食は、「あえて食べないこと」と理解されます。

「完全断食」といえば、断食中は水だけを飲み過ごすことであり、少量でも何かを口にすれば、それは断食の手法として亜流と考えられるのも無理ありません。

断食をしてみようと考えている人にとって、養生館で行われる「養生断食」は、昼に玄米おむすびを食べるのだから、厳密な断食ではないと敬遠されることがあるかもしれません。

語弊があるかもしれませんが、それだけで断念してしまうのは、あまりにももったいないことだと思います。

当然、その良さを伝えきれていないという謗りも免れないので、この場を借りて、少し説明を試みてみようと思います。

断食といえば、従来、水だけを飲み行う「完全断食」が主流でした。たしかにその効果は絶大で、病気が改善する人が続出して、断食というものを世間に認知させるのに十分な説得力がありました。

時代は下って、利便性を追求するあまり、不自然で人工的な食品があふれ、より多様化した社会の中で、疾病構造もまた複雑化していきました。

つまり、戦時下ないし戦後まもなくという、過酷な環境の中で、生き延びてきた先人は、旺盛な意欲に加え、粗食と肉体労働で鍛えられた強靭な体力があり、それは強い負荷、ショック療法を受け入れる素地があったということでもあります。

体に直接働きかける治療法は、言い換えれば刺激です。その刺激を受けて反発的に好転させるだけの自力が備わっていることが、その治療を成功させる条件となります。

しかし、一見すると豊かな環境への変化が、皮肉にも頼りない脆弱な体質を作ることになり、今までのような力強い手法では効果が出ないばかりか、弊害ばかりが強調されるようになってきているのです。

だからといって、現代人の体質は先人のそれとは比較にならないほど劣っており、気休め程度の断食しか受け付けない不完全な存在なのかといえば、むしろ肉体的な強靭さとは別の領域が、進化、発達していると感じています。

いずれにしても、現代人にふさわしいやり方というものがあって、より洗練された健康観を提案できると思うのです。

そうした理念を、養生館では「脳」「瞑想」「自然との一体感」というキーワードに込めています。

【お腹がすいたら運動する】

朝起きたら、まずヨガ、そしてトレイルウォーキングに出かけます。朝食を食べません。空腹感が生じているでしょう。

だからこそ運動するのです。

「食べないで運動するなんて、バテてしまう。」
「お腹がすいたら食べる」

これが常識ではないでしょうか。

しかし、考えてみてください。野生動物にとって、空腹感は食事の合図ではなく、「食事を手に入れるために行動を始める」合図に過ぎないということが分かります。

肉食動物なら狩りをし、草食動物ならえさを求めて歩き回ります。

空腹感とは、食後3~4時間経過し、血糖値が70㎎/dlくらいになると生じるといわれています。

しかし、その段階では、まだ筋肉と肝臓に蓄えられたブドウ糖や脂肪細胞に蓄えられた脂肪には手が付けられていません。

空腹時に運動をすることで、はじめて、蓄えがエネルギーとして血液中に放出されることになり、血糖値は自然と90㎎/dlくらいまで増加します。

つまり、空腹感が生じ始めたときよりも、食欲は抑えられ適量で満足感が得られるようになるのです。

生活習慣病を予防し、適正な体重を維持するために、運動すべきタイミングは、まさに空腹感が生じたときということなのです。

【脳をリフレッシュする】

完全断食で懸念されることとして、断食中の低血糖があります。

普段から大食、特に精製炭水化物を多量に食べている人は、断食中に低血糖に陥ることがあります。

いわば、衰弱状態で、頭痛、悪心、倦怠感と、かなり活動意欲をそがれるものです。

そうした、活発な活動を妨げる要素を最小化し、断食と運動と瞑想の相乗効果を発揮させるために、「養生断食」というスタイルが考案されました。

日常で経験されない刺激、負荷によって、内臓や自律神経、脳は活性化されます。

また適度な空腹感は眠気を予防し、瞑想における集中力を高めることにつながっていきます。

【食べる喜びをかみしめる】

「食べないでいること」も、もちろん大切なのですが、「より良く食べること」も大切であると考えるところが、一般的なダイエット志向の断食とは一線を画すところです。

そして、「何を食べるのか」と同時に「どのように食べるのか」にも配慮していきます。

食べる身構え(肉体的な側面)と心構え(精神的な側面)です。

滞在中は各種体操やヨガ、ウォーキングを取り入れ、体を整えていきます。

食べ物を受け入れる内臓機能を正常化すること。

そして全身運動によって、適度な疲労感をもたらし、熟睡を促します。

こうして活性化された生理機能は、生命力あふれる食欲をもたらします。

乾いたスポンジが勢いよく水を吸い込むように、少量の粗食でも完全に栄養を吸収し、残滓をよどみなく出し切ることができます。

そうした、食事の喜びは、味わいの鮮烈さと、食べ物のありがたみを思い出させることでしょう。

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